第180国会 2012(H.24)年3月22日「国土交通委員会」

第180国会 2012(H.24)年3月22日「国土交通委員会」

Q1 公共事業見直しについての基本認識について
▼大河原:
東日本大震災をはじめ災害が多いこの国で、国土を守る、保全するという意味において、国土交通省の役割が大きいと実感しております。
大臣が昨年発表された「持続可能で活力ある国土・地域づくり」の意味は大きいと改めて思います。持続可能性-低炭素・循環型社会の実現は、前田大臣の持論ですから、非常に心強く思っている次第です。具体的な施策、納得のいく事業を進めていかなければならないと思います。
初めに、民主党は公共事業の見直しを掲げて政権を取らせていただきましたので、公共事業の見直しについて、大臣の基本的な認識を伺いたいと思います。
借金をして事業を行うわけですが、借金を返し切れるのか、また、造ったものの維持管理、修繕、更新に多大な経費がかかることからいえば、修繕の計画を先に立てたうえで、新しいものがどれぐらい必要なのか、真に必要な社会資本の整備をすべきだと思いますが、大臣、この点いかがでしょうか。

△前田武志大臣:
大河原さん、かねてこの持続可能という面で、公共施設、こういった社会資本というものの持続可能性がどういうことなのかということについていつもご議論をしていただいております。
ご指摘のように、やはり社会資本というのは人間生活、個人の住宅から始まって、コミュニティー、まち、そういう地域ということのサービスを基盤を支えているわけですから、地方自治体が管理する公共施設というのが非常に多いわけですね。社会資本の大宗を占める地方公共団体が管理する施設を含め、国土交通省所管の社会資本の実態把握というものをまずやらなければならないということで、実は省内にそういう政策官チームを発足させておりまして、随分といろんな面で横断的にやっていかなければなりません。国交省管轄だけでも随分と分野が広いわけですから、そういうことの定期的な巡視、点検の実施や長寿命化計画の策定、予防的な修繕や計画的な更新を進めるなど、戦略的な維持管理、更新を実施していく必要があると、こう認識をしております。
更に一点申し上げますと、造ったときには高度成長の全国一律の規格で、グレードも高いものから一律にやっていった。しかし、それから50年もたって、その地域に応じた、地域の構造が劇的に変わって、社会構造、経済構造、特に人口構造等変わっておりますから、その時点における更にその先を読んだ要求される機能は何かというのを的確に推計、判断して、それに合ったような更新、維持管理をしていかないとと思います。これは地域の知恵というものが非常に重要になってくると思いますので、今までのような延長線上のやり方ではない、新しいやり方というものも模索しているところであります。

Q2 社会資本整備総合交付金の理念について
▼大河原:

地域にはできない大きな事業を直轄で国がやるのは当たり前だと思います。ただ、国の直轄事業が、地域に与えたマイナスの影響も非常に大きく、今大臣にお答えいただいたように、その地域を主体としつつ、地域ができない部分を国が、時代、社会経済環境の変化に合わせて適応させるという長大な計画をきちんと持っていることが必要だと思います。
先日、会計検査院が参議院の決算委員会からの調査要請に基づいて42の治水事業について検査し、予定どおりにいかない象徴のように大滝ダムの例があり、230億の建設予定費が15倍になった報告がありました。やはり途中のチェックが欠かせませんし、構想段階からきちんと合理的な説明ができなければいけませんし、長くかかった計画に、計画の経緯や根拠となるデータが失われていて説明責任が果たせないようなことがあってはならないと思います。
民主党政権の中では、国が何でも整備するという中央集権型から、地域の主権を生かして特性に合わせた社会資本整備が可能になるように補助金改革も進めてきております。平成22年(2010年)から始まっている社会資本整備総合交付金に込められた理念と意味を改めてお答えいただきたいと思います。

△吉田おさむ副大臣:
これまでの縦割りの補助金に対する相当な批判もございました。また、政権交代という部分におきまして、この補助金というものを一括交付金にしようという政権のお約束もございました。そういう中で地域主権の確立を進めるという意味で、国土交通省の様々の補助金を統合し、地域から、地方から出た政策課題に基づき策定した整備計画に対して、一つ一つ個別の事業ではなく計画全体をパッケージとして支援するのがこの社会資本整備総合交付金でございます。
これは、今までの補助金とは違い、どのようなインフラを整備するかを地域の判断により自由に選択できる、また、創意工夫を生かしてハードだけではなくソフト事業も実施可能にしてございます。今まででしたら一つの補助金から次の補助金、余ったからという流用はできませんでしたけれども、整備計画内の事業間でありましたら、こういうふうな意味での国費の流用というか、活用というものが可能になっていると。まさに、地方の自由度や使い勝手を大幅に高めたものになっていると言えるかなと思います。
今、これから地方においても地域主権ということの中で、もっとより効果的、効率的、ただ効果的、効率的ということも忘れてはならないと思います、そういうふうな部分からも、社会資本の整備が実施されるように適切な運用に努めてまいりたいと、そういうふうに考えているところでございます。

Q3 今後の治水理念構築のための本格的議論開始について
▼大河原:

具体的なテーマで伺います。
あす(3月23日)、滋賀県議会は、水害から命を守る総合的な治水を目指して、滋賀県流域治水基本方針を決定すると伺っています。この方針は、どのような洪水に遭っても人命を守り、壊滅的な被害を防ぐという視点でこれまでの治水政策を再検証した結果、水をただ流すのではなく、河道に洪水を入れて貯留する、はんらん原を減災対策として講じる、地域の防災力の向上で備えるという、ためる、とどめる、備えるという川の外の対策についても改めて流域治水を定義して総合的に具現化するものだそうです。
できるだけダムに頼らない治水を目指して設置された有識者会議でも、治水対策の立法手法とか新たな評価軸、総合的な評価の考え方を検討するところまではやってきていますが、今後の治水理念を構築するという4番目の目的がまだ達成されておりません。
自治体から流域治水の方向性が示された今だからこそ、今後の治水理念を構築するための本格的な議論を前田大臣につくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

△前田武志大臣:
ご指摘のこの今後の治水対策のあり方に関する有識者会議、これは平成21年12月に発足し、平成22年9月に今後の治水対策の在り方についての中間報告を出しました。その中で、個別ダム検証の手順や手法等に加えて、今後の治水対策の方向性を既に提示をしています。その中で、今後の治水対策の一つのイメージは、流域全体で治水対策を分担し、治水安全度の確保を図ることが重要である、そして今後の治水理念の概論として示したわけで、その中にもハード、ソフトの組合せという考え方が反映されております。
しかし、このイメージといいますか、方向性を出したところでとどまっているというご指摘は、あるいはそうかなという感じもいたします。今後のその方向性を基に、個別ダムの検証を通じて明らかになってきた課題も踏まえた上で討議する必要があると、このようにされております。今後の治水理念の検討ということをこの本有識者会議で精力的に行っていただきたいと思います。
なお、ちょっと加えて言いますと、既に非常に厳しい制約条件の中で土地利用が高度化している日本の河川流域というのは、治水対策が必要であればあるほど、そういう流域は高度に開発されている。したがって、非常に制約条件が大きい。そういう中でも、例えば鶴見川の流域であるだとか、これなんかもまさしく、言ってみればその流域全体で治水を柔軟に受け止めてきた一つの例かなという感じもする次第であります。

Q4 利根川の河川整備計画の進め方について
▼大河原:

昨年の災害の経験からも、どんな洪水が起こっても、人命、財産を守るという基本的なことを改めて認識をしなければと思っています。
ダムによる治水とはいっても、ダムができるまでの安全は確保されておらず、ダム完成で初めて計画に載っている想定内の降雨に対して安全が保障されるわけです。また、ダムの下流に降った雨には対応できないなど、ダムには制約があります。
ですから、できるだけダムによらない治水を目指すという当初の目的を幅広く国民の前で議論することが求められています。いろんな学者や長年活動してこられた地域の方たちもおられますので、そういう方たちが声を出す場をまたつくっていただけたらと思っております。
利根川水系河川整備計画では、流域が5つのブロックに分かれており、非常に広い範囲です。八ツ場ダムに関していえば、河川整備計画を早急に策定し、整備計画相当目標量を検証することが、八ツ場の事業継続の条件になっています。
官房長官裁定でこのことが示されており、現在、整備計画策定中ですが、状況、今後の手順についてお示しください。

△関克己政府参考人:
ただいま、利根川の河川整備計画の進め方ということでご質問いただきました。
この利根川の河川整備計画につきましては、官房長官裁定をしっかり受け止めて、遺漏なきように計画を作る、また利根川の河川整備計画については、意見を異にする専門家あるいは学者のご意見もお聴きするとの大臣の方針に沿って現在計画の策定体制について検討を進めているところです。具体的には、河川法第16条の2第3項になりますが、河川に関し学識経験を有する者の意見をお聴きするスキームについて検討を進めているところであり、現在、意見を異にする方々からもご意見をお聴きすることも含め、この意見聴取に関するスキームについて最終的な詰めを行っているところです。

▼大河原:
公開討論を求められてきた学者の方たちもおられるわけですから、丁寧に国民の前でのオープンな議論を保障していただきたい、改めてお願いをしておきます。

Q5 社会資本整備審議会における都市農業の検討について
▼大河原:

都市農業の振興について伺います。
低炭素・循環型まちづくりには、都市農業、都市農地の保全が非常に大きな意味をもつと思います。東京も多摩の地域までは市街化区域ですが、その中に農業が息づいております。
平成22年に策定された国土交通省の成長戦略では、2、3年後の実現を目指して都市計画の制度の在り方を検討するとなっており、社会資本整備審議会の都市計画・歴史的風土分科会、中でも都市計画制度の小委員会でその見直しが検討されてきております。都市農地、都市農業に関してはどのような報告がされているでしょうか。

△加藤利男政府参考人:
今ご質問いただきました社会資本整備審議会の都市計画制度小委員会におきましては、効率的でコンパクトなまちづくりを進めていくという観点から今後の都市計画制度の在り方についてご審議いただいており、昨年(2011年)2月にそれまでの検討事項の整理を行っていただいております。この中で、都市農地については、食料生産あるいは緑地、避難地、レクリエーションの場としての多様な役割も踏まえ、非建築的土地利用のまま安定的に生かしていく旨の方向が示されているところです。
現在、国土交通省では、大臣の下で、持続可能で活力ある国土・地域づくりに向け様々な施策展開を進めておりますが、その中でも、貴重な緑である都市農地や民有緑地の保全、創出は非常に重要な課題であるというふうに認識をしているところです。

▼大河原:
都市計画法の中で東京の市街化区域内の農地、生産緑地は守られていますが、これまでその認識がなく、市街化区域はいつか宅地化される地域というイメージです。一方、東京に農地があって当然、農地をそのままに、という回答が85%という都民アンケートもあります。
昨年11月の小委員会ではケーススタディーが行われ、都市農地についての議論がされております。今年1月開催された小委員会でも、提出されました資料によれば、緑地と農地について、緑地保全・創出の多様な手法の展開を課題として、平成24年度(2012年度)に運用指針の改正が予定されているとあります。具体的にどのような内容になるのでしょうか。

△加藤利男政府参考人:
ご指摘のように、都市計画制度小委員会では、緑ですとか農地に着目してその保全、創出を図る手法についてケーススタディーを行っているところです。これを踏まえまして、流域等の自然的、地形的条件を踏まえた緑のネットワークの形成に向けて、地区レベルの緑地について、都市計画のマスタープランですとか、あるいは緑の基本計画等において明確化していくことが必要であると考えております。
それをどのような形で措置していくかについては今後検討を深めていきたいと思いますが、ご指摘のように、都市計画運用指針ですとか、都市緑地保全法の運用指針への反映もその選択肢の一つということで考えておるところでございます。

Q6 都市計画制度の在り方案の決定時期について
▼大河原:

農林水産省では、都市農業の振興に関する検討会が設置され、農業政策として都市の農業について議論されております。東京都も農業振興プランの改定期に入っております。国土交通省では今伺っている対応方針がいつ議論されるのか、都市計画制度の在り方案がいつ決定予定なのか、時期的なものはいかがでしょうか。

△加藤利男政府参考人:
都市農業の今後の在り方につきましては、ご指摘のとおり、農林水産省において検討会が設置され、検討が進められているところです。
私ども所管をさせていただいております都市計画制度の在り方をどうするかということにつきましては、今申し上げました農林水産省の検討会の議論ですとか、あるいは関係者の皆さんからのご意見、ご要望、また、これが非常に悩ましいところでございますが、一般のサラリーマンの方あるいは農地以外の緑の所有者等との税の公平性の議論をどうするかといったような点が検討課題としてございますので、丁寧に関係者の皆さんの意見をお伺いしながら調整を図っていく必要があると考えております。
このため、いつ決まるというようなことについては現時点で申し上げることはできませんけれども、引き続き農林水産省等関係省庁と協力して検討を進めていきたいと考えております。

▼大河原:
都市農業の守るには税改正だと言われることもあり、税の公平性は難しい問題ではありますが、都市農業への理解も以前より進み、農業政策上の位置付けも見直されていることを踏まえ、都市農業を守るための制度改正について、国土交通省が積極的に検討を早急に行っていただけるように強く求めておきます。

Q7「今後の高速道路の在り方中間とりまとめ」と外環道について
▼大河原:

外環道について伺います。
高速道路のあり方検討有識者委員会が昨年12月に「今後の高速道路のあり方中間とりまとめ」を発表した中で、関越から東名を結ぶ16キロ、総工費1兆2820億円と言われている東京外環の整備、管理を要する費用について、直接の利用者、自動車ユーザー全般の負担を基本に自動車ユーザー以外の主体、便宜を共有する地域からも負担を求めるべきとあります。
この両方を組み合わせたものにするという決定のプロセスが私には見えません。ご説明いただけるでしょうか。

△吉田おさむ副大臣:
今委員お話しのとおりで、昨年12月9日の高速道路のあり方検討有識者委員会の中間とりまとめにおきまして、有料道路方式での整備を基本とし、足りない分については事業主体の責任を明確にしつつ税負担も活用するとされたところであります。
これを踏まえまして、国土交通省におきまして対応を検討し、直轄事業と有料道路事業の基本的な役割分担の考え方を本年1月24日に第三者委員会である社整審道路分科会事業評価部会にご報告したところです。その後、2月22日、東京都に対し、来年度の事業内容を説明する観点から直轄事業の事業費の幅を提示したところであり、最終的には有料道路事業も含めて来年度の事業内容を決定する予定となっております。

▼大河原:
決定されたこと、されていないことがわかりづらい。丁寧な情報公開、説明責任を果たしていただきたいと強く求めて、質問を終わります。